ウィザーズプラスコラム

第121回まやかしの経営手法

前回は「歴史に学ぶ経営手法」と題して、革新的な経営手法を生み出すヒントについてご紹介してみました。今回は新たな経営手法について模索している方にピッタリな、ある書籍をご紹介してみたいと思います。

経営手法を模索している方にオススメだとは言え、小難しい経営理論のお話や耳慣れない横文字の並ぶモデル解説本ではありません。ご紹介したいのは昨年来話題となっている、『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』という書籍です。なかなか興味深いタイトルですよね。

理論やテクニックではなく信頼関係を築くこと!

『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』の著者はアメリカでコンサルタントとして活躍するカレン・フェラン氏。コンサルタントとしての経験をもとに、望ましいコンサルティング業務の在り方やクライアントとコンサルタントの正しい付き合い方を提唱したものとなっています。

おもに経営指南をするコンサルタントを対象とした本となっていますが、コンサルタントを使う側であるクライアント企業や経営方針について模索している方が読んでも参考になる本です。

この本に書かれているのは、「戦略計画」や「最適化プロセス」、「数値目標」、「コアコンピタンス」などといった経営手法はじつは役に立たないのだということ。大手コンサルティングファームで実績を築いてきた著者自身、こうした専門用語を使ったテクノロジーを駆使して、多くのクライアントの経営改善に取り組んできたそうです。でも業務改善を実現できた真の要因はそうしたテクノロジーなどではなく、クライアント内部における人間性の回復とコミュニケーションの改善によるものだと著者は断言しています。

気鋭のコンサルタントならではの勇気ある発言に発表当初はさまざまな賛否を読んだそうです。でも著者が書いていることはけっして悲観的なお話ではありません。むしろ「テクノロジーではなく、人間力で!」と、奮闘する経営者を鼓舞してくれる内容となっています。ですからこの本はきっと険しい道のりを歩む際の良い友となると思うのです。

本書では経営コンサルタントとの正しい付き合い方も述べられています。いわく、革新的な経営方針を求めて外部のコンサルタントに分析や計画策定を依頼しても、コンサルタントが去った後に残るのは数ページの報告書だけ。報告書を読んで学ぶのと、社員が自らの手で何週間もかけて分析し、結果をまとめるのとは雲泥の差があるのだということです。

新たな経営戦略を開発する意義とは完成した報告書にあるのではなく、自分たちで研究して学び、発見するプロセスにあります。そうした重要なプロセスを自社の資産とするためには、戦略立案をコンサルタント任せにするのではなく、まずは自分たちの頭を使って考えてみることが必要なのだと著者は書いています。

コンサルティング業務において大事なのは、立派そうに見える方法論やツールではなく対話です。クライアントとコンサルタント、経営者と従業員、従業員同士のコミュニケーション。まやかしの経営手法に惑わされることなく、自社に合った経営手法を心の通った対話によって生みだすことが肝要なのです。

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